「発酵 fermentation」の時を待つ

おはようございます。今年のサレジオのテーマは発酵です。始業式ではパン作りのお話をしましたが、以来何回か発酵についてお話ししてきました。今日も発酵についてお話しします。

 

発酵は英語でFermentation といいます。fermentationの語源はラテン語でfervereだそうです。Fervere は「泡立つ」という意味で、確かにフドウがお酒になる途中で炭酸ガスがぶくぶく泡立っている様子をよく表現しているわけですね。

 

もちろん古代の人は私たちのように発酵のメカニズム、細菌や酵母の存在を知りませんでした。しかし知らないからこそ、自分の知識を越えたところで展開している自然の営みに対する畏敬の念や、結果を信頼して待つことの意味を知っていました。パンが膨らむ、ぶどう酒になるといったプロセスは定められた自然のプロセスで、人はそれができるまで待つことしかできません。私たちはともすると古代の人とは比べ物にならないほど知識 knowledge をもっていても、知恵 wisdomを持っていないのかも知れません。

 

この古代の人の知恵とは「待つ」ということです。私たちは便利な生活の中で焦って結果を求めたり、すぐ諦めてしまいます。でも少し立ち止まって待ち、じっくりプロセスを見つめてみませんか。イエス様は神様に信頼して待つことの大切さを譬え話として語っています。

 

イエスは言われた。「神の国は次のようなものである。人が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。土はひとりでに実を結ばせるのであり、まず茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実ができる。(マルコ4章26節~29節)」

 

待つこと、それは自分自身に目を向けることです。勉強も部活も急には伸びませんね。でも毎日の努力の積み重ねは確実に結果を引き出します。そしてある時に「ああ分かった」「できた」、そう感じる自分がいます。待つことで味わえる驚きの瞬間です。自分の中に静かに起こっているfermentation を体験する夏休みでありますように。