皆さんはタピオカミルクティーを飲んだことありますよね。最近流行っているあれです。でもタピオカって南米原産のキャッサバという芋から取れるデンプンを原料としいるものですからさしずめ焼き芋を紅茶と食べる、それだけのものなんですが。
それにしても流行というか、それを支えるインスタなどの影響力はすごいものですね。気づいたら街中でみんなタピオカを持って歩いています。おまけにタピオカの有名店まであり、人々が押し寄せ列を作っているそうです。この景色を見て、流行りを追いかける大衆文化だからと諦めながらも、「この人ほんとにタピオカ好きなの?」と心の中で冷めたツッコミを入れている人もいるかもしれません。
ところである思想家はこう言います。「大衆とは、自らを評価しようとせず、自分が『みんなと同じ』だと感ずることに、いっこうに苦痛を覚えず、他人と自分が同一であると感じてかえっていい気持ちになる、そのような人々全部である。」まさに今の日本の日常の背景を表しているように思います。
誰の言葉だと思いますか?何と今から約100年前、日本から遠く離れたスペインに生きたオルテガという哲学者の言葉です。しかも将来こうなるだろうという予言ではありません。まさに彼の生きた時代を描写した言葉だったのです。20世紀前半、それはヨーロッパをファシズムが席巻し、国内では思想統制、他国とは分断を生み、最終的には戦争へと突入していった時代です。オルテガはこの流れの背景に、違う意見を聞こうとせず無批判に多数派に迎合していく「大衆」の存在を見ます。
オルテガから約100年経った今再び、オルテガが危惧した「違いに対する不寛容」、国家の分断、熱狂的な指導者に追随する人々の渦は世界のあちこちに現れています。「みんなと同じがいい」「数の多い方が正しい」この安易な気持ちは大きな危険をはらんでいるとオルテガは時代を超えて今も警鐘を鳴らしています。また「みんなと同じだと息苦しい」と感じる時、それは私たちに大切なことを教えている瞬間かもしれません。次回タピオカを買うときには是非オルテガという哲学者のことを思い出してください。