ある川のほとりに1匹のサソリがいました。

サソリはなんとかして川の向こう岸に渡ってみたい

と思っていました。

そこへ1匹のカエルが現れました。

そこでサソリはカエルに頼みました。

「俺をお前の背中に乗せて向こう岸まで

連れていってくれないか。」

しかしカエルは,「そんなことをしたら

君は僕を刺して殺してしまうだろう」と言って

断りました。

サソリは言いました。「お前を刺したりなんかしない。

そんなことをしたら,俺も溺れて死んでしまうだろ。」

この言葉を聞いてカエルは納得し

サソリを背中に乗せて向こう岸へと泳ぎはじめました。
川の中程にさしかかったとき,カエルは突然お腹が

燃えるように熱くなるのを感じました。

見ると,サソリの毒針が刺さっていたのです。

カエルは聞きました。

「自分も死んでしまうのに,どうして?」

サソリは一言こう言いました。

「これが俺の性(さが)なんだ。」
物語はここで終わってしまいます。

さて,この物語が伝えていることは

いったいなんだったのでしょうか。

誰の目にもこのサソリの行動は愚かです。

しかし,このサソリが象徴しているのは

実は私たち自身なのです。
私たちはしばしば自分の弱さに負けてしまいます。

自分でも悪いと分かっているのに、

つい友だちを傷つけるようなことをしてしまったり

親に反抗したり、悪いことをしても素直に謝れ

なかったり、うそをついたり、人のせいにしたり

やるべきことをサボってしまったり。

こうして私たちが,自分の力ではどうしようもない

とあきらめて自分の弱さに負けてしまう時

私たちもこのサソリと同じように人をも自分をも

傷つけているのです。
弱さへの傾きを感じるとき

それに打ち克とうと努力するのは

本当に難しいものです。

しかしその努力こそが

私たちに求められているものであり

それを通して私たちは向こう岸に向かって

一歩前進することができるのだと思います。