2013年09月04日

思いを馳せる

山本一力という作家を知っていますか。

私は大ファンというわけではないですが、山本一力さんの作品をいくつか読んで、とても好きになりました。

いわゆる時代小説ですが、山本さんの小説には、江戸の深川という場所が物語の舞台として頻繁に登場します。

 

山本さんは、「その深川から多くのものが伝わってくる」と言っています。

それがたとえ地面や小石ひとつからでもです。

山本さんが言っているのは、恐らく、それらを通して、江戸時代、深川に住んでいた人々の思いが伝わってくる、ということでしょう。

より正確にいうと、それは、思いは伝わってくるものではなく、読み取るべきものである、ということです。
思いを読み取ることのできる人にとって、地面はただの地面ではなく、小石もただの小石ではないのです。

反対に、思いを読み取ることのできない人にとっては、地面はただの地面、小石はただの小石にすぎません。

要は想像力の問題です。

そして想像力の基本とは、まず第一に人の思いを汲み取ろうとすることです。

 

北川純二