2025年05月09日

血の滲むような地道な努力——フランク・ゲーリーの斬新な建築作品に度肝を抜かれて

度肝を抜かれました。つまりあまりに驚かされました。1929年、カナダのトロント生まれで米国で活躍中のFrank Gehryという建築家に。彼が創る作品は無機質な銀色の壁を自在に組み合わせることで複雑な構造体を完成します。ぐにゃぐにゃと壁が波打つ建築様式は斬新で、生き物みたいにうごめきます。まるでボイラー室のむきだしの配管のよう。果たして住み心地は?彼の代表作はフライング・フィッシュ(1992年)、ワイズマン美術館(1993年)、ダンシング・ハウス(1996年)、グッゲンハイム美術館ビルバオ(1997年)、ウォルト・ディズニー・コンサートホール(2003年)、ルイヴィトン財団美術館(2014年)です。

 

人の意表を突く形。見たこともないデザイン。その建築を見た人々はゲーリーに対して質問します。「あなたはアーティストですか」。彼はすかさず応えます。「いや、俺は建築家だ」。その会話からわかるのはゲーリーが作品を職人として設計するだけで、決して華やかなアーティスト気取りの英雄にならない、という事実です。突然閃いた突飛なアイディアで突発的に動くのではなく、日々の務めを堅実に果たし続ける単調な仕事の積み重ねによって活躍するのを彼は誇ります。地味で職人気質な人間が圧倒的な建築を完成させます。

 

人類史上、同じ時代を生きるあらゆる人の度肝を抜くような作品を創る建築家が何人もいます。たとえば19世紀から20世紀にかけて活躍したアントニ・ガウディ。彼の携わったスペイン・バルセロナにあるサグラダ・ファミリア大聖堂は1882年から今日に至るまで143年目を迎えても、まだ建設中です。他に、木材だけで高層建築を創る隈研吾も有名です。彼らは若い頃から苦労しました。世間から理解されず、それでも地道に自分の信念を強く抱き続けて努力しました。生活費を全部建築現場の工費につぎ込んで、飲まず食わずで働きました。血の滲むような地道な努力が、驚くべき作品の完成につながりました。他人から誤解されても信念を貫く彼らの本気の姿勢にも度肝を抜かれました。

 

グッゲンハイム美術館ビルバオ(1997年)

※詳しく知りたい方は以下の文献を参照してください。ポール・ゴールドバーガー(坂本和子訳)『建築という芸術——評伝フランク・ゲーリー』鹿島出版会、2024年。