2023年06月15日

ガウディと同じ気持ちで生きる日本の藝術家たち

19世紀から20世紀にかけて活躍したスペインのバルセロナの建築家アントニ・ガウディ・イ・コルネ(1852-1926年)。

 

6月13日から、東西線の竹橋駅1b出口から徒歩3分の「東京国立近代美術館」にて、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が開催されています。

 
1882年から建築が始まり、1883年からガウディが第二代目の責任者だったサグラダ・ファミリア大聖堂は「聖家族贖罪聖堂」とも呼ばれ、2026年に完成予定です。着工から144年もの歳月がたち、まだ建設中です。2026年は、ちょうどガウディ没後100周年です。

 
この大聖堂の建築には日本出身の外尾悦郎(そとお・えつろう)も主任として重責を果たしています(註1)。そして評論を公表してガウディの建築の意義を世界的に最初に明らかにしたのが建築史家の鳥居徳敏(とりい・とくとし)です(註2)。他にも2000年に華道家の勅使河原宏(てしがわら・ひろし)監督や作曲家の武満徹(たけみつ・とおる)がガウディの聖堂建築の美術的で音楽的な価値を史上初の映像作品として示しました(註3)。

 

 

さらに『スラムダンク』の作者の井上雄彦(いのうえ・たけひこ)がガウディの人柄と建築を丁寧に解説する著作や映像を公表しました(井上の「悪より救い給え」という「主の祈り」の一節の筆跡がサグラダ・ファミリア大聖堂の扉に刻まれています)(註4)。

 

 

相手のよさに気づいて、いち早く多くの人びとに紹介する姿勢が日本の藝術関係者の特長です。昔のスペインではガウディの建築のよさに気づけない者もいました。

 

病弱だったガウディは学校に通えず、常に独りで野原で遊び、自然環境から学びました。つまり植物や動物や川の水の形を丁寧に眺めて驚きを感じ、その感動を原動力として「曲線」だけで構成される教会建築を生み出しました。そして、あらゆるものを支えて活かす神への尊敬の念が次第に深まり、熱心なキリスト信者として建築現場に住み込んで「神の家としての聖堂づくり」に人生をかけました。彫刻家の外尾も40年以上もバルセロナで作業をするうちにガウディと同じ気持ちで彫刻をつくるべく洗礼を受けました。

 


(註1)外尾悦郎『ガウディの伝言』光文社(光文社新書)2006年。
(註2)鳥居徳敏『ガウディ(よみがえる天才6)』筑摩書房(ちくまプリマー新書)2021年。
(註3)勅使河原宏監督、武満徹音楽、ホアン・バセゴタ・ノネル監修DVD『アントニー・ガウディ
ー』SME Visual Works、2000年9月20日(72分)。
(註4)井上雄彦『Pepita新装版 DVD付』日経BP、2012年11月19日(75分)など。