2025年09月18日

『テクノ封建制』という言葉の絶妙さ

今朝は一冊の本を紹介します。ヤニス・バルファキス(斎藤幸平解説、関美和訳)『テクノ封建制』集英社、2025年2月28日。この本を今年の3月に読みました。衝撃を受けました。『テクノ封建制』という言葉の絶妙さに。

 

封建制度は、主君が諸侯に土地を与え、諸侯が臣下に土地を貸し、地域を治める制度です。中国では紀元前から封建制度が始まり、ヨーロッパでは中世に封建制度が発達し、日本では鎌倉時代から江戸時代まで封建制度が続きました。

 

封建制度は過去の身分制度だと、現代人は笑い飛ばすでしょう。しかし、同じような身分制度が今日も続いています。『テクノ封建制』という新たな奴隷制度が。たしかに、私たちはインターネットの制度のなかで生きており、コントロールされています。ネット環境から自力で抜け出すことができなくなっています。少し努力すれば、ネット依存状態から自由に抜け出すことができるにもかかわらず、あえてネットのなかに没入するのが現代人なのです。自分で奴隷状態をやめないままで、囚われているわけです。おろかです。

 

この本には「デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配するとんでもなく醜くて、不公平な経済の話。」という副題がついています。ひとりの父親が子どもに対して本音で語るという体裁の本です。親子の会話をとおして、現代の奴隷制度が明らかとなります。

 

「テクノ」と「封建制」という、ふつうは連結させない話題をつなげたことに本書の独創性があります。「テクノ」は最新技術のことであり、コンピュータを使った無機質な最先端の科学的な活動です。そして「封建制」は資本家と奴隷の労働上のシステムです。「テクノ」は新しいことがらであり、「封建制」は古いことがらです。両者は、まったく逆方向の状況です。しかし、最先端のことがらをつかさどる資本家が古い時代の制度と同じ態度で現代人を支配しているという現実を作者が指摘しています。

 

テクノ封建主義