朝の話|阿部神父

2026年06月11日

「一条戻り橋」と「青雲歩道橋」

 皆さんも毎日通る「青雲歩道橋」。私も東京へ通勤するたびに、この歩道橋を通ります。いつも通りながら想うことがあります。いま通っているのが「一条戻り橋」だ、と。


 「一条戻り橋」は京都の橋です。あの世とこの世の境界となる現場です。「一条戻り橋」は794年の平安京の造営の際に架けられた橋です。ただし、現在の橋は1995年に平安時代と同じ場所に架け直されたものです。


 私はサレジオ学院の隣のサレジアン・レジデンスに住んでいますが、「青雲歩道橋」を渡って北山田駅のほうへと移動するたびに、あの世からこの世へと出向くつもりで歩いています。そして仕事を終えて、北山田駅からサレジアン・レジデンスのほうへと戻るときには、この世からあの世へ帰り着くような気持ちで「青雲歩道橋」を渡っています。


 京都の「一条戻り橋」は平安時代に重要な役割を果たしました。荷物を運ぶ船の発着所であるとともに陸上交通にも貢献し、あらゆる地域の情報をやりとりする待ち合わせ場所だったからです。新しい情報を採り入れる拠点として価値がありました。そして特に陰陽師の安倍晴明が橋のたもとに式神を隠しました。陰陽師とは天文学や暦の研究に従事することで日本国家の政治、言わば「まつりごと」の運営を支えた国家公務員のことです。そして式神とは自由自在に任務を遂行する仕事人です。和紙を人の形に切り抜いて呪文をかけると実際の人間の姿になって働くわけです。そして仕事を終えると、また和紙のきれはしに戻りました。こうして「一条戻り橋」から新しい時代の動きが始まりました。


 一方、「青雲歩道橋」は、いつも静かで、ほぼサレジオの学生や教職員だけが通る小さな架け橋です。しかも、たもとには道路が設置されており車やバスが通っています。そして見えるのは住宅地ぐらいです。あんまり情緒がありません。しかし、毎朝、皆さんは駅から出向くときに「青雲歩道橋」を通ることで新しい気持ちになって、「よい一日にしてみよう」と決意することもできます。

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