朝の話|阿部神父
2026年09月19日
『ヴォイニッチ写本』─世界で最も謎に満ちた本
皆さん、おはようございます。今日は、世界中の研究者を悩ませ続ける「未解読の書物」についてお話しします。その名は『ヴォイニッチ写本』。
この写本は15世紀頃に作られた古い本です。しかしページを開いた瞬間、違和感を覚えます。そこに並ぶ文字は、どの国の言語とも一致せず、暗号とも言い切れず、まるで人類が知らない文明の言葉だからです。さらに奇妙なのは、挿絵です。見たことのない植物、現実とは異なる星の配置、謎めいた人物たち。どれも、私たちの世界の「常識」から少しずれています。まるで別の世界の図鑑を覗き込むような感覚になります。240ページの写本の写真版と解説が一冊になったレプリカを8月に手に入れて毎日眺めています。
この写本が世に出たのは1912年。古い書物を扱うウィルフリッド・ヴォイニッチがイタリアで発見したことから、その名がつきました。以来、言語学者、数学者、暗号研究者、さらには軍の情報機関までが解読に挑みました。しかし、誰一人として「何が書かれているのか」を突き止めることができませんでした。
ある研究者は言いました。「これは、誰かが未来に向けて残したメッセージかもしれない」。別の研究者はこう語ります。「いや、これは高度な暗号だ。解読できないのではなく、解読してはいけない内容なのだ」。そして、こう主張する人もいます。「この写本は、意味を持たない。だが、意味がないことこそが最大の謎だ」。
最新のAI技術を使っても解読は進みません。つまり600年前の誰かが残したこの写本は、現代の科学をもってしても理解できないほど複雑で、深い謎を秘めています。皆さんは何を感じますか。この写本は私たちに「世界には、まだ説明できないことがある」という事実を思い出させるのかもしれません。科学が発展し、情報があふれる時代でも、未知の領域は必ず残ります。ところが未知の領域に挑む姿勢こそが、学ぶことの面白さです。



ヴォイニッチ写本(イェール大学バイネッキ図書館所蔵/Wikimedia Commons・Public Domain)