朝の話|辻家神父
2026年06月13日
トキとノアと私たち
おはようございます。先月5月31日、能登半島でトキが放鳥されました。トキはかつて日本の空を飛んでいましたが、一度は絶滅してしまいました。しかし保護活動によって数を増やし、今回、能登の空にも戻ることになりました。能登半島地震からの復興のシンボルとしても期待されています。
このニュースを聞いて、私は旧約聖書の「ノアの箱舟」の話を思い出しました。神様は洪水が来ることをノアに知らせ、箱舟を造って動物たちを守るよう命じます。そのおかげで、多くの生き物が命をつなぐことができました。環境保護の世界では「ノア・プラン」という考え方があると本で読んだことがあります。人間による環境破壊を現代の洪水にたとえ、絶滅の危機にある動物たちを動物園などで保護し、将来また野生に戻そうという取り組みです。動物園が現代のノアの箱舟の役割を果たしているのです。トキが再び能登の空を飛ぶ姿は、その一つの希望のしるしと言えるかもしれません。
私たち人間は今、自然を壊す力も持っていますが、同時に、守る力も持っています。これは自然だけの話ではありません。私たちは、自分のことだけを考えて生きることもできますし、周りの人や社会、未来の世代のことを考えて生きることもできます。
聖書のノアの物語はただの昔話ではありません。「どのような世界を次の世代に残すのか」という、今を生きる私たちへの問いかけでもあります。能登の空を飛ぶトキを思い浮かべながら、そのことを少し考えてみたいと思います。

(写真)サレジオ学院の食堂の釣り天井は、ノアの箱舟がイメージされていると言われています。