朝の話|阿部神父
2025年11月20日
量子力学の極意——相手思いの心で道具を使用すること
個人的には「量子力学」に非常に興味があります。ずっと研究書を読み続けていますが、次の本は面白かったです。ミチオ・カク(斎藤隆央訳)『量子超越——量子コンピュータが世界を変える』NHK出版、2024年。私たちは新たなパラダイム・チェンジ(枠組みの転換)の時代を生きています。つまり、17世紀の宇宙論が「天動説」から「地動説」へと転換したときのように。あるいは物理学の基本的な枠組みがニュートンによる「万有引力の法則」からアインシュタインによる「特殊相対性理論」へと転換したときのように。
現在のコンピュータの基本はデジタル情報であり、0と1の組み合わせによって情報を描いています。情報の最小単位はビットと呼ばれます。この0と1の配列をデジタル計算機に送り込むと、瞬時に計算して結果を出力します。この0と1の配列を原子の状態に置き換えて、原子コンピュータを作る試みが量子コンピュータの開発です。原子は回転するコマです。原子は磁場のなかで上か下のどちらかを向いて並び、0と1に対応づけられます。デジタルコンピュータの性能は、情報の0と1の配置によって決まりますが、原子の場合は絶えず回転することで0と1を瞬時に同時に示すことになるので、組み合わせの可能性が無数に広がります。情報処理能力が格段に加速化しつつ巨大化します。革命です。
量子コンピュータの登場により、各国のあらゆる秘密の暗号は瞬時に解読され、従来の防衛システムが無力化されます。軍事や金融の常識は一挙に破壊されます。他にも薬の開発や遺伝子の解析の速度も上がり、医学上の治療の可能性が増えます。しかし進歩的な道具を他者の幸せのために使う人間の心が思いやり深いものであることが欠かせません。サレジオ学院のように「相手思いの心」を鍛え上げることに力を入れる教育現場にも意味が出てきます。皆さんも「相手思いの心」を備えつつ最新鋭の技術を役立てればよいでしょう。
